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自壊性を内包している。MADARAMANJI『VORTEX』を鑑賞してきました

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自壊性を内包している。MADARAMANJI『VORTEX』を鑑賞してきました

「軽井沢の美術館に行きたい」
そう呟いたら夫が「まかしとけ」と言った。

https://danro.asahi.com/article/12149038

誰もが抱える「本能と理性の矛盾」を表現

たまたまある現代アーティストのインタビューを読み、作品を見てみたいなと思ったら今まさに個展が開催中でした。

場所は長野県の軽井沢ニューアートミュージアム。

オンラインギャラリーの公開もある。でもやっぱり生で見たくて、名古屋から片道4時間半かけて行くことにした。
私は免許がないので夫の運転で。
いつもごめん、夫よ。

別にアートに詳しい訳ではない。
ていうか実のところ全然よくわからない。

でもすごく良かった。
かっこよかったしキレイだった。

スタッフさんに「今日はWeb記事を拝見してどうしても見たいと思って名古屋から来たんです」とお話したところ、ご本人が「はじめましてMADARAMANJIです!」とめちゃくちゃ気さくに話しかけてくださいました。

感激のあまり挙動不審になりつつも少しだけお話することができました。
本当に嬉しかったです。

MADARAMANJIさんのインタビューを読んだとき私は、「詩人になりたい、でなければ何にもなりたくない」という大好きなヘッセの言葉を思い出していました。

MADARAMANJIは日本古来の金属加工技術である「杢目金(もくめがね)」を駆使した立体作品を制作し、現在国内外で高い注目を集める現代美術家です。

感想を書こうと思っても、言葉にするのが難しい。

それらは目には見えない人間の内面をカタチにしてあるように見えた。
一番大きな作品には『私と私以外と私達』と名付けられていた。

私がとっても好きだったのは「Uncovered Cube」という多面体。かわいい。
この四つはみんな金、銀、銅、それから真鍮でできているのだけど、それぞれまったく表情が異なる。

角度によって見え方が違う。
あっちから見るとこんなかたちで、こっちから見るとあんなかたち。
金ピカのキレイなキューブの一角が削れて、そこには禍々しい渦が張り付いていた。

コンクリートの塊に杢目金の板を打ち込んだ「Ambivalence(矛盾)」という作品は、コンクリート=合理性、杢目金=精神の不安定さや合理性を表現しているのだという。
中におもりが入っていて微妙なバランスで立っているそれは、どこか無理しながら頑張って生きている人間の姿に見えた。

テクスチャーも好きだ。
雨に濡れるアスファルト、コンクリートブロック、草木や花、煙る山、流れる雲。
私はそういったものを何時間でもずっと眺めていられる。

じっと見ていると、自分自身に還れるような、大切なことを見つめられるような気がする。
満ち足りた気持ちになることもあれば焦燥に駆られることも、逃げ出したくなるような気分になることもある。
眺めている間ずっと、頭の中は忙しく言葉を紡いでいる。
そういう人は多いと思う。

ずっと見ていたかった。

『自壊性を内包している』

杢目金は、本来成立しえないものをなんとか成立させているため、自壊性を内包しています。紙一重で壊れてしまうんです。

DANRO

感情、倫理、本能、経験、無自覚性、そういったものが膨大に混ざり合った渦が私の内側です。

様々な要因を内包した構造体の、【強烈な自壊性と矛盾】と、【それが尚崩れる事無く成立出来る結束しようとする力】。

作家ステートメントより

躓いたことがないという人間はいない。生きていると何かしらの課題に出会う。
自暴自棄になることだってある。
幼少時に多く傷つくとたいてい一生苦しみを抱え続ける。
感情や欲望を持て余すことも。
それから他者や社会との折り合いもつけないといけない。

乖離しないようにぐちゃぐちゃに壊れないようにバランスを保つのは大変だ。
ひとは結構簡単に壊れてしまう。

ずっしりと安定感のある生きかたを好む人もいれば、ギリギリのバランスを愛おしく感じる人もおりましょう。
脆いのも強いのもどちらも等しく美しい。

帰り道「さっきまでの道はコンクリートでガタガタだったがやっとアスファルトになった」と夫が言った。

私は「コンクリートとアスファルトは何が違うんだっけね?」と問うた。

「原料が違う。コンクリートはセメントで、アスファルトは石油かな(的なことを言っていた。忘れた)」

「授業でやらなかった?高校でアスファルトを作ったよ。俺が作ったアスファルトは強度が低くてすぐにぶっ壊れた」

アスファルトがぶっ壊れるってなんだよウケる~と言っておいた。
でもそういう事なんだ。
構成する原料が同じでも、割合と作り方で成果物は、出来上がるものは全く異なる。
同じような、似たようなものに見えてもフェイクだったりするし、値段も価値も全く違うことがある。
テクノロジーや加工技術が進化した現代はなおのこと。
もうあらゆるものの真贋が自分の目だけではわかりにくいのだ。

インフルエンサーやSNSのバズに価値があるのもそのためで、みんな「これは正解ですよ」「良いものですよ」という保証書を求めている。
(それと同時に「加工してあっても何でもキレイで面白ければいいじゃない」という感覚もあるし現代はスピード感がすごい)

構成するものが同じなのに出来上がりが全然ちがう、というのは人間もそう。
ヒトは等しく水分とあとなんやらかんやらで出来ており、脳みそのつくりだって多分そんなに大差ない。
感じることも考えることも大昔からずーっと一緒。生命に意味などない。
快や不快や幸不幸は電気信号とかホルモンとかのせい。
そして操作しているのは世の中で環境で他人(外的刺激)で、でも最終全て自分自身だ。
ぜんぶ自分で決めなくちゃいけない、っていうか自分で選択している。
自覚するかしないかだ。
これはアドラー心理学でいうなんちゃらかんちゃらだ。

マインドワンダリング。
選択理論。自己決定。
外的刺激ではなく内的刺激から行われていると自覚すること。

こういうことを考えていると「あーもうどうでもいいからセックスしたいな」と思う。

さて軽井沢へ行った翌日、私は某ハウジングセンターでバイトをしていた。

モデルハウスの前に立って「こんにちは~ご見学いかがですか」と呼び込みをする仕事。

ほぼ専業主婦の私は時々この派遣バイトをしている。
コロナで案件がなかったので数か月ぶりのお仕事だった。

が、悪天候もありお客様はほとんどいなかった。
モデルハウスの前を人っ子一人誰も通らないので本当にやることがなかった。
雨の中プリキュアが踊っていた。

この日は、誕生日の前日だった。

というわけで32歳の最後は、雨に濡れる地面を眺め続けて約5時間ずっとぼーっとしておりました。
その間考えていたことが今回書いた内容という訳です。ピロピロ~。

http://www.madaramanji.jp/#menu/portofolio

MADARAMANJIさんありがとうございました!
というかMANJIさん、同い年だわ。